相続財産の最近のブログ記事

答えはYESであり、またNOでもあります。
 
YESの理由は、子が親を相続すると(単純承認)、親の有した一切の権利義務を承継するからです(民法896、920条)。つまり、権利たる土地などの所有権とともに、借金などの金銭返済義務も承継するのです。だから、この場合は親の借金を返さなくてはいけません。
 
しかし、これでは子供がかわいそうですね。自分のあずかり知らないところで親が多額の借金をして、それの返済義務を負わされるのはあまりに不当です。したがって、この借金返済義務を逃れる道があります。これがNOの理由です。義務を逃れるには、ふたつの方法があります。
 
まずひとつめは、相続放棄(民法938条)です。
民法にはこう書いてあります、「相続の放棄をしたものは、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」。
したがって、初めから相続人ではないのだから、当然に借金の返済義務も承継しません。もっともこの方法では、親に借金のほかに多くの土地などの財産が残っ ていたとしても、これらもすべて相続できませんので、相続財産 - 借金 = がプラスであったとしたら、損になりますね。
 
そこで、もうひとつの方法として、限定承認(民法922条)の制度があります。
「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる」と民法922条 に書いてあります。相続財産 - 借金 = がマイナスであっても、マイナス分を相続人たる子が返済する義務がなく、相続財産 - 借金 = がプラスであれば、そのプラス分を相続することができるという、たいへん合理的な制度です。こうしてみると、限定承認がいちばんよさそうにも思えます が、手続きがたいへん面倒であるというデメリットがあります。

限定承認図

なお、単純承認、相続放棄、限定承認の選択は、相続人が、自己のために相続があったことを知ったときから3か月以内に行なう必要があり(民法915条1項)、その期間内に相続放棄も限定承認もしなければ、単純承認されたとみなされます(民法921条2項)。
この3か月を熟慮期間といい、通常は「相続が開始したこと」と「自己が相続人となったこと」を知ったときが起算点とされます。

しかし、これでだけでは、被 相続人たる親に隠し借金があった場合、相続人たる子は、「借金があることを知っていれば放棄したのに、知らなかったため放棄しなかった」のにもかかわらず 借金を背負うことになり、かわいそうですね。そこで、最高裁判判例は、「相続人が相続財産(消極的財産=借金を含む)は全く無いものと信じたために熟慮期 間を徒過しても、そのように信じたことに相当の理由があれば例外的に、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時か ら起算される」と救済措置をとっています。
遺留分とは、一定の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合(民法1028?1044条)のことをいいます。[有斐閣法律学小事典]
 
簡単にいうと、被相続人の意思では奪えない相続分です。
例えば、死亡したAさんには相続人として子供が二人(兄、妹)いたとします。生前からこの長男と折り合いが悪いため、Aさんは遺言で「財産全部を娘だけに 相続させる」との指定をしたとします。しかし、長男はこのような遺言にもかかわらず、まったく遺産ができなくなるのではなく、遺留分の限度で遺産の相続を 請求できるのです。
 
 
ところで、先日次のようなドラマを見ました。祖父が死に、孫の兄妹の二人が相続人となります。祖父は遺言を残しており、この遺言によると兄が遺産の相続人から外されていました。そこでこの兄は、祖父の遺言執行人たる顧問弁護士に、「少しくらい財産をもらえないのか?」と相談しますが、この弁護士は「遺言により、あなたは一切財産をもらえない」と断言します。これに怒り狂った兄は、唯一相続人となった妹を殺害しようと計画する・・・という内容です。
 
しかし、そんなわけないんです。少しくらいなら、つまり遺留分なら請求できるのです。ドラマの弁護士は遺留分のことを知ってか知らずかいっさい触れず、「遺言どおり、いっさい相続できない」と言っていますが・・・
 
 
さて、冒頭の定義をもう少し詳しく解説しましょう。
遺留分とは、「一定の相続人のために」、法律上必ず留保されなければならない「遺産の一定割合」のことでした。
 
まず、一定の相続人とは、「兄弟姉妹以外の相続人」(民法1028条)のことです。つまり、すべての相続人に遺留分があるのではなく、兄弟姉妹以外の相続人だけに遺留分があるのです。
 
つぎに、一定の割合ですが、民法にはつぎのように定められています
・直系尊属のみが相続人である場合 ⇒ 被相続人の財産の3分の1 (民法1028条1号)
・それ以外の場合 ⇒ 被相続人の財産の2分の1 (民法1028条2号)
 
これを先ほどのドラマの例にあてはめると、兄は被相続人の孫なので民法1028条2号の場合にあたり、死亡した祖父の財産のうち2分の1は遺留分となります。そしてその遺留分から、法定相続分(2分の1 民法900条4号)の相続を主張できます。
したがって、兄は、「妹(孫)に全部遺産を相続させる」との祖父の遺言にもかかわらず、祖父の遺産のうち4分の1は相続人として請求できることになります。
 
 
 
このように、遺産をあげたくないのに、遺産の一部を渡さざるを得ないという遺留分制度がある根拠としては、相続制度というものが被相続人の意思の尊重ばか りでなく、遺族の生活保障という相続人の側の利益も考慮されているからだといわれています。どうしても、遺産を残したくない場合は、相続人を排除する(民 法892?893条)しかありませんが、この方法も相続人の相続権を一方的に奪ってしまう強力なものですから、これが認められるには厳格な条件があるので す。
 
 
 
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