内縁のご夫婦、あるいは事実婚のご夫婦、つまり婚姻届を出していないご夫婦は、相続において注意が必要です。

残念ながら、事実婚の配偶者には、遺産の相続権がありません。これは、法律上、妻または夫ではないからです。
また、裁判所は、解釈上も、内縁の配偶者の相続権を、一貫して否定しています。これは、配偶者の範囲を法律上明確にすることにより、取引の安全を図ることが主な理由です。死後いきなり、実体のない「配偶者を名乗る」見ず知らずの人間が現れることによる混乱を排除する必要があるためです。

したがって、たとえば夫婦別姓のこだわりから長年事実婚を続けてきた場合、その一方が死亡すると、相手方の相続が法律上認められません。さらに不都合なことは、死亡した当事者の兄弟姉妹にも相続権があるため(民法889条1項2号)、事実婚の配偶者には遺産が法律上認められないにもかかわらず、まったく疎遠になっていた死亡当事者の兄弟姉妹に遺産が転がり込むという事態も生じ得るということです。

そこで、このような事態を避けるには、遺言書を作成することをおすすめします。
遺言書で、内縁の配偶者へ遺贈するのです。

兄弟姉妹には遺留分がありませんので(民法1028条)、内縁の配偶者へすべての財産を遺贈すれば、内縁の配偶者はすべての遺産を受けることができます。もちろん、死亡当事者の父母には遺留分があるため、その限りで減殺請求される可能性もあります。しかし、父母の遺留分は3分の1ですから(民法1028条)、仮に死亡当事者の父母が遺留分減殺請求をしても、内縁の配偶者は、法律上の配偶者としての相続分以上の遺産を受け取ることができます。

実際、子供のいない事実婚・内縁の配偶者の相続に関しては、トラブルが多いようです(子がいれば当然に子が相続します)。
自分のいなくなった後の相手方の生活を保護するために、遺言書を書くことをおすすめいたします。