「東日本大震災で肉親を亡くした被災者が、借金相続という新たな悲劇に襲われている。」(岩手日報WEB版より

相続の際には、不動産や預貯金と同じく借金も相続されます(民法896条)。ただし、相続放棄をすれば借金を相続することはありません(民法939条)。
この相続放棄は、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」に手続きをしなくてはなりません(民法915条1項)。
そして、「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、原則として「被相続人の死亡を知り、かつ、そのために自己が相続人となったことを覚知したとき」です(大決大15・8・3民集5・679)。

今回の大震災では、「家族が生前に借金の存在を知らされなかったり、津波で書類が流されるなど相続事実を知らないケースが多」く、被相続人に借金があったのかどうか、借金があったとしてもどのくらいの額だったのかが不明なまま、相続放棄手続きせずに3カ月を経過しようとしている、というのがニュースの内容です。

対策としては、相続放棄の期間伸長を裁判所に申し立てることが考えられます(民法915条1項但書)。今回の大震災という非常事態については、裁判所も理解をしていると思いますから、期間伸長は受理されるのではないでしょうか。

なお、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」の解釈については、例外的な基準を示した判例があります。
相続財産(財産も借金も)が全くないと誤信し、その誤信につき相当の理由がある場合には、3箇月の起算点を例外的に相続財産の認識時または認識可能時とするものです(最判昭和59・4・27民集38・6・698)。
この判例で注意を要するのは、財産が全くないと思っていた場合に限っている点です。たとえば、不動産を相続することは認識していたが、借金の存在は認識していなかったという場合には、「借金を認識した時から」ではなく、原則通りに「被相続人の死亡を知った時」から3箇月となります。

いずれにしましても、被相続人が会社経営等の事業者である場合には、借金や連帯保証を負っていることが考えられますので、まずは弁護士等の専門家に相談するのがよろしいかと思います。